54歳、料理人として30年。「冷凍食品を使え」と言われた日、包丁を置きたくなった。

登場人物

学(まなぶ)、54歳。福岡県在住。30年間、和食の料理人として働いてきた。最初は老舗の割烹で修行して、その後居酒屋チェーンの料理長を10年。腕には自信がある。でも、今の店はオーナーとの方針の食い違いが続いている。「冷凍食品をもっと使え」「人件費を削れ」。料理人としての誇りが、少しずつ削られていく。辞めたいと思い始めて1年。でも54歳で転職先が見つかるのか。飲食業界しか知らない自分に、他に何ができるのか。不安で動けない。

仕込みの時間に、オーナーが厨房に入ってきた。

「学さん、この煮物、冷凍のやつに切り替えてくれん?原価が合わんのよ」

あなたは、手を止めた。

朝5時から仕込んでいた里芋の煮物だった。面取りして、下茹でして、出汁を引いて、弱火でじっくり煮含めている。30年間、変わらずやってきた仕事だ。

「……冷凍ですか」

「うん。業務用の冷凍、最近は質がいいけん。お客さんもわからんよ」

わかる。お客さんはわかる。30年料理を作ってきた自分が、そう思う。

でも、言えなかった。オーナーは数字で話す人だ。原価率、人件費率、FL比率。料理の味ではなく、数字で店を動かす。

「わかりました」

そう答えた自分が、情けなかった。

54歳の料理人、誇りが少しずつ削られていく

20歳で博多の割烹に入った。

親方は厳しい人だった。出汁の引き方を覚えるのに1年かかった。包丁の研ぎ方を毎晩練習した。先輩に怒鳴られ、皿を叩き割られ、何度も辞めようと思った。

でも、辞めなかった。

「学、お前の出汁はまだ甘い。けど、筋はある」

親方のその一言が、自分を引き留めた。

25歳で独り立ちして、いくつかの店を渡り歩いた。30代で居酒屋チェーンの料理長になった。大量調理の中でも、出汁だけは手を抜かなかった。「うちの出汁は本物ばい」と、若いスタッフに教えてきた。

それが、今の店では通用しない。

オーナーが求めているのは、速くて安い料理。味ではなく、回転率。職人の腕ではなく、マニュアル通りの作業。

冷凍食品の比率が、半年で3割から5割に増えた。仕込みの時間は短くなった。若いスタッフに教えることも減った。

「俺、何のためにここにおるんやろ」

閉店後、一人で厨房を掃除しながら、そう思う夜が増えた。

辞めたい。でも、54歳で次があるのか

辞めたいと思い始めて、もう1年になる。

でも、踏み出せない。

54歳。飲食業界しか知らない。学歴もない。パソコンもろくに使えない。料理を作ることしかできない人間が、今さらどこに行けるのか。

妻に相談した。

「辞めたいっちゃけど、次が見つからんかもしれん」

妻は言った。

「あんた、30年も料理ば作ってきたやん。それで次がないわけなかろう」

妻の言葉は、いつもシンプルだった。でも、自分にはそこまでの自信がなかった。

飲食業界は若い人が中心の世界だ。体力勝負。長時間労働。54歳の料理人を、今さら欲しがる店があるのか。

求人サイトを開いても、「20代〜30代活躍中」の文字ばかり。自分の居場所はないように見えた。

「飲食業界専門」の転職サービスを知った夜

ある夜、閉店後の厨房で一人、スマホを触っていた。

「飲食 転職 50代」

検索してみた。期待はしていなかった。

でも、検索結果の中に、見慣れないサービスがあった。

飲食業界に特化した転職エージェント。飲食業界で働く人が支持する転職サービスNo.1。一般には公開されていない非公開求人も多数。キャリアアドバイザーが飲食業界の事情に詳しく、条件交渉まで代行してくれる。

「飲食専門の転職サービスなんて、あるんか」

普通の転職サイトでは、飲食の求人は片隅に追いやられている。でも、ここは飲食だけ。料理長、寿司職人、パティシエ、ソムリエ、ホールマネージャー。飲食で生きてきた人間のための場所だった。

オンライン面談にも対応。在職中でも相談OK。すぐの転職じゃなくても大丈夫。完全無料。

「在職中でもいいんか。とりあえず話だけでも聞いてみようか」

学が見つけたのは、このサービスだった

※完全無料。飲食業界専門のキャリアアドバイザーが対応

キャリアアドバイザーに言われた、意外な一言

翌週、オンラインで面談をした。

担当のキャリアアドバイザーは、30代の男性だった。以前は自分も飲食店で働いていたという。

学は、自分の状況を正直に話した。30年間の経歴。今の店でのオーナーとの食い違い。冷凍食品の話。辞めたいけど次がない不安。54歳という年齢。

アドバイザーが言った。

「学さん、54歳で30年の経験がある和食の料理人は、業界では非常に貴重ですよ」

「……そうですか?」

「はい。今、飲食業界は深刻な人手不足です。特にベテランの料理人は引く手あまたです。若い人は入ってもすぐ辞める。30年続けてきた方の技術と経験は、お金では買えません」

「でも、54歳ですよ」

「年齢がマイナスになる業界もありますが、飲食は違います。むしろ50代の料理長を求めている店は多いんです。落ち着きがある、若手を育てられる、お客様への対応が丁寧。それは経験がないと身につかないものです」

その言葉を聞いて、胸の奥が熱くなった。

1年間、「自分にはもう価値がない」と思い込んでいた。でも、飲食業界を知り尽くしたプロが、「あなたは貴重だ」と言ってくれた。

紹介された店は、出汁を大切にする店だった

アドバイザーが紹介してくれたのは、3軒の候補だった。

そのうちの1軒に、心が動いた。

福岡市内の和食店。個人経営。オーナーシェフが高齢で引退を考えていて、後任の料理長を探している。冷凍食品は一切使わない。出汁は毎朝、一番出汁から引く。旬の食材だけを使う。

「ここ、俺がやりたかったことそのものやん」

面接に行った。オーナーは70代の男性だった。厨房を案内してくれた。ピカピカに磨かれたまな板。年季の入った銅鍋。壁に掛けられた包丁の列。

オーナーが言った。

「学さん、うちは効率より味ば大事にしとる。それでよければ、ここで腕ば振るってくれんね」

あなたは、深く頭を下げた。

新しい厨房で、最初の出汁を引いた朝

入社初日の朝、5時に厨房に入った。

昆布を水に浸す。火にかける。沸騰する直前に昆布を引き上げて、鰹節を入れる。香りが立つ。漉す。

一番出汁。30年間、何千回と繰り返してきた工程。

でも今日の出汁は、少しだけ味が違う気がした。

同じ昆布、同じ鰹節、同じ手順。何が違うのか。

少し考えて、わかった。

自分の気持ちが違った。

前の店では、「どうせ冷凍に置き換えられる出汁」を引いていた。ここでは、「この出汁が今日の料理のすべてを決める」という緊張感がある。

料理人として、もう一度、ちゃんと立っている。

味見をした。

うまい。

20歳の頃、親方に「筋はある」と言われた日のことを思い出した。あれから34年。筋は、まだ切れていなかった。

もしあなたが、厨房で一人ため息をついているなら

料理人としての誇りが、少しずつ削られている。効率優先、原価優先の現場で、自分の腕を活かせない。

辞めたい。でも、50代で飲食の転職なんて無理だと思っている。

もしそんなあなたがいるなら、知っておいてほしい。

飲食業界は今、ベテランの料理人を求めている。30年の経験は、この業界では最大の武器になる。年齢がハンデではなく、信頼になる世界がある。

飲食業界に特化した転職エージェントなら、あなたの経験を正しく評価してくれる。一般の転職サイトでは見つからない、腕を活かせる店を紹介してくれる。在職中でも、すぐの転職じゃなくても、相談するだけでもいい。

あなたが30年かけて磨いてきた腕は、まだ求められている。

あなたの腕を、待っている厨房がある

※在職中でもOK。オンライン面談にも対応

仕込みの時間、冷凍食品の箱を開けながら、ため息をついていたあの朝。

今、同じ時間に、あなたは昆布を水に浸している。鰹の香りが厨房に広がる。

54歳。料理人の手は、まだ温かい。