哲也(てつや)、55歳。神奈川県在住。25年前に脱サラして、小さなIT企業を立ち上げた。社員7名の中小企業だが、ここ数年は受注が好調で利益もしっかり出ている。妻(52歳)と二人暮らし、息子は社会人で独立済み。決算を控えて、顧問税理士から「今年はかなり税金がいきますよ」と言われた。車好きで、若い頃は仕事の合間に車で全国を走り回っていた。社員にも報いたいと思っているが、何がいいか悩んでいる。
顧問税理士から電話があったのは、決算まであと3ヶ月に迫った夜だった。
「哲也さん、今年の着地ですけどね……かなり利益が出てます」
喜ぶべきはずの言葉が、なぜか重く響いた。
「税金、どれくらいですか」
税理士は一拍置いて、ゆっくりと言った。
「このままだと、1,500万円ほどになります」
電話を切った後、デスクの椅子に深く沈み込んだ。
1,500万円。
25年前、7坪の雑居ビルの一室から始めた会社だった。最初の3年は自分の給料も取れなかった。社員を一人、また一人と雇って、やっと7人になった。ここまで来るのに、何度も眠れない夜を越えてきた。
ようやく利益が出るようになって、社員にも少しはボーナスを出せるようになって、これからだと思っていた矢先の「税金1,500万円」。
稼いだお金の半分近くが、税金で消えていく。
「なんのために働いてるんだろうな」
誰もいない社長室で、つぶやいた言葉が、やけに大きく聞こえた。
中小企業の経営者が直面する「税金の壁」と節税対策
翌日、哲也は顧問税理士の事務所を訪ねた。
「何か、節税の方法はないですか?」
税理士は、うなずきながら資料を広げた。
「いくつかありますよ。生命保険、中小企業倒産防止共済、小規模企業共済、そして——減価償却を使った節税」
書類を見ながら、哲也は一つひとつ検討していった。
生命保険は、以前ほど節税効果が大きくない。共済系は上限額が決まっていて、1,500万円を相殺するには足りない。
「減価償却って、何が対象になるんですか?」
「建物、機械、車両ですね。特に車両は、条件を満たせば1年で全額を経費に計上できる方法もあります」
「1年で全額、ですか」
「はい。3年落ちの中古車両なら、購入価格をその年のうちに全部、経費として落とせます」
哲也は身を乗り出した。
減価償却とは、事業で使う資産(建物・機械・車両など)の購入費用を、使用する年数に分けて経費として計上する会計処理のこと。3年落ち以上の中古車両は、法律上の耐用年数が短くなるため、1年で全額を経費にできるケースがあります。
「節税」だけで終わらない、もう一つの選択肢
「ただ、普通の乗用車だと、売却するときにあまり値段がつかないことが多いんです。だから結局、節税した分と売却で失う分で、トントンになる」
「なるほど……」
税理士は、そこで少し声のトーンを変えた。
「哲也さん、キャンピングカーってご存知ですか」
「キャンピングカー?」
意外なワードだった。頭に浮かんだのは、テレビで見た北海道を旅する家族連れの映像だった。
「最近、中小企業の経営者さんの間で、キャンピングカーを使った節税が注目されてるんです」
税理士の説明は、シンプルだった。
3年落ちの中古のキャンピングカーを購入すると、1年で全額減価償却できる。車両本体だけでなく、維持費や保険料、駐車場代まで経費にできる。
さらに、自分が使わないときはレンタカーとして貸し出せば、不労所得になる。代行会社に任せれば管理の手間もかからない。
そして、キャンピングカーは中古市場でも人気が高く、リセールバリューが落ちにくい。数年使った後でも、購入価格の6〜7割で売れることが多い。
「節税して、収益化して、最後に高く売れる。しかも、会社の福利厚生として社員に貸し出すこともできる。『三高』って呼ばれてますよ」
「でも、本当にそんなうまい話があるのか?」
哲也は慎重な性格だった。
節税だけで終わらず、収益化もできて、売るときも高く売れる。三拍子そろった話は、どこかに落とし穴があるように感じた。
その夜、自宅に戻ってから、スマホで調べ始めた。
キャンピングカー節税で検索すると、実際に導入した経営者の声がいくつも出てきた。
IT企業の50代社長は、1,200万円の中古キャンピングカーを購入して、初年度に1,000万円を経費計上。社員のレジャー利用にも開放して、福利厚生として求人にも書いているという。
40代の個人事業主は、750万円のキャンピングカーを5年運用した後、450万円で売却。節税と運用収益を合わせて、トータルでプラスになったという話だった。
読み進めるうちに、哲也の中で何かが動き始めた。
節税だけの話じゃない。この話には、別の魅力が隠れている。
忘れていた、若い頃の夢
20代の頃、哲也は車で日本中を走り回った。
安い中古の軽自動車に寝袋を積んで、仕事の合間の連休を使って、北海道へ、九州へ、四国へ。お金はなかったけれど、自由だった。
起業してからは、その時間がなくなった。会社を守るのに必死で、自分の時間なんて考える余裕もなかった。
気がつけば、55歳。
妻と二人の生活は落ち着いていたけれど、どこか物足りなさもあった。息子は独立して、夫婦の時間が増えた。でも「旅行に行こう」と誘っても、ホテルも、新幹線も、結局は「いつもの旅」の延長にしかならない。
キャンピングカーという選択肢は、もしかしたら——。
哲也は、久しぶりに胸の奥が少し熱くなった。
社員に、もう一つ誇れるものを
もう一つ、哲也の心を動かしたのは「社員への福利厚生」という使い方だった。
7人の社員は、家族のような存在だった。20代で入ってきて、もう15年以上働いてくれている社員もいる。子どもが生まれて、家を買って、それぞれに人生を築いている。
給料やボーナスで報いることはしてきた。でも、それ以上の何かを渡したいと、ずっと思っていた。
「キャンピングカーを社員に開放できる」
その一言が、哲也の中で響いた。
家族がいる社員なら、週末に子どもを連れてキャンプに行ける。若い社員なら、友人と車で旅行に出かけられる。会社の車を、自由に使っていい。
普通の中小企業では、なかなかできない福利厚生だった。
「うちの会社、キャンピングカーがあるんだよ」と、社員が家族に話している姿を想像した。少し誇らしげな顔で。
それは、給料明細に書けない価値だった。
税理士の事務所を出た後、ある会社のサイトを開いた
次の週、哲也は税理士にすすめられたキャンピングカー専門の会社のサイトを開いていた。
節税のシミュレーション、オーナーの体験談、運用代行の仕組み、売却時のサポート。知りたかった情報が、順序立てて並んでいた。
ページの下に「無料の節税額診断」というフォームがあった。会社の規模、年商、設立年数を入力すると、おおよその節税額が出る仕組みらしい。
哲也は、そこに情報を入力した。
画面に表示された数字を見て、息を飲んだ。
税理士の話は、決して誇張ではなかった。
決算の日、税理士が「ずいぶん余裕ができましたね」と言った
3ヶ月後、決算を迎えた。
哲也は、3年落ちの中古キャンピングカーを1,000万円で購入していた。購入費用の大部分は、その年のうちに経費として計上できた。
税金は、1,500万円から大幅に減った。
税理士が決算書を見ながら言った。
「哲也さん、ずいぶん余裕ができましたね」
哲也は、窓の外に停まっているキャンピングカーを見た。
夕日を浴びて、少しだけ金色に光っていた。
あれは節税の道具であり、収益を生む資産であり、社員への贈り物であり、そして——夫婦で若い頃の続きを歩むための、一台の車だった。
55歳。「やっと、動ける自分」になった
数週間後、哲也は妻を助手席に乗せて、初めての遠出に出かけた。
行き先は、富士山の麓。学生時代に初めてデートで行った場所だった。
妻が助手席で「懐かしいね」と笑った。
夜、湖のほとりにキャンピングカーを停めて、妻と二人で星を眺めた。
25年前、会社を立ち上げたとき、自分はこんな時間を手に入れるためだと思っていただろうか。
たぶん、そこまでは考えていなかった。ただ必死だった。
でも、たどり着いた今の景色は、想像していたよりずっと豊かだった。
もしあなたが、同じ夜を過ごしているなら
中小企業の経営者として、必死にここまで来た。
利益が出るようになった。社員も増えた。でも、決算を前にすると「また税金で持っていかれる」という感覚が重くのしかかる。
あの夜の哲也と同じ場所に、今のあなたがいるなら——。
節税だけで終わらない、もう一つの選択肢があることを、知ってほしい。
25年、あなたが積み上げてきたものは、税金で半分に減るためじゃない。
もっと自由に、もっと豊かに、これからの時間を生きるためのものだ。

