正樹(まさき)、52歳。東京都在住の会社員。実家は新潟県の農家。父(78歳)が今年の春、体力の限界を感じて農業を引退した。母(76歳)と二人で細々と続けていた田んぼを、ついに手放すことにした。問題は、倉庫に残された農機具の数々。トラクター、田植え機、コンバイン、草刈り機。父が長年大切にしてきた道具。処分するにも、地元の業者に聞いたら「引き取り費用がかかる」と言われた。捨てるのにお金がかかるのか。でも、このまま倉庫に置いておいても劣化するだけだ。
父から電話があったのは、桜が散り始めた4月のことだった。
「正樹、今年で田んぼ、やめることにした」
静かな声だった。怒っているわけでも、悲しんでいるわけでもない。ただ、決めた人の声だった。
78歳。腰が悪くなっていたのは知っていた。去年の秋、稲刈りの後に「もう体がきつい」と言っていた。母も76歳で、手伝うのが精いっぱいだった。
私は東京で会社員をしている。実家に帰れるのは盆と正月だけ。農業を継ぐ気はなかったし、父もそれを望んでいなかった。「お前はお前の道を行け」と、昔から言ってくれていた。
「わかった。お疲れさま、お父さん」
電話を切った後、しばらく窓の外を見ていた。
父が50年以上続けてきた田んぼ。祖父の代から受け継いだ土地。あの風景が、今年の春で終わるのだ。
倉庫に残された、父の「相棒」たち
ゴールデンウィークに帰省した。
田んぼはもう、水が張られていなかった。近所の農家に貸すことになったらしい。家の周りは静かで、いつもこの時期に聞こえるはずの耕運機の音がなかった。
「倉庫、見てくれるか」
父に言われて、裏の倉庫に行った。
重い引き戸を開けると、そこにはたくさんの農機具が並んでいた。
ヤンマーのトラクター。クボタの田植え機。コンバイン。草刈り機。発電機。チェーンソー。耕運機のアタッチメント。
どれも、父が何十年も使い続けてきた道具だった。手入れが行き届いていて、古いけれど、丁寧に扱われてきたことがわかる。
トラクターの座席に、父がいつもかけていたタオルがまだ置いてあった。
「これ、どうするの?」
父は、少し間を置いてから言った。
「……処分しないといけないんだろうな。でも、どうすればいいかわからん」
農機具の処分、想像以上に難しかった
東京に戻ってから、あなたは農機具の処分方法を調べ始めた。
まず、地元の農機具販売店に電話した。
「引き取りは可能ですが、処分費用がかかります。トラクターだと、5万円から10万円くらいですね」
捨てるのに、お金がかかる。
次に、スクラップ業者に聞いた。
「鉄くずとして引き取れますが、ほとんど値段はつかないです」
父が50年大切にしてきたトラクターが、鉄くず扱い。
フリマサイトやオークションも考えた。でも、農機具は大きすぎて配送が大変だし、出品の手間もかかる。写真を撮って、説明を書いて、質問に答えて、梱包して。会社員の自分には、そんな時間はなかった。
そもそも、これらの農機具にいくらの価値があるのかすらわからない。相場がわからないまま売ったら、安く買い叩かれるかもしれない。
かといって、倉庫にそのまま置いておけば、錆びて、劣化して、さらに価値が下がる。倉庫の維持費もかかる。
どうすることもできないまま、1ヶ月が過ぎた。
「一括査定」という方法を知った夜
ある夜、スマホで「農機具 買取」と検索してみた。
いくつかの買取業者のサイトが出てきた。でも、1社ずつ連絡して、1社ずつ査定してもらうのは面倒だった。しかも、1社だけの査定では、その金額が高いのか安いのか判断できない。
さらに検索を進めると、「一括査定」というサービスがあることを知った。
農機具の情報を入力すると、最大20社の買取業者から一括で査定額が届く仕組み。無料で使える。査定額に納得しなければ、売らなくてもいい。
故障品やジャンク品でも査定対象になると書いてあった。出張買取にも対応している。つまり、新潟の実家まで業者が来てくれる。
「地元の業者に聞いたら処分費用がかかると言われたのに、ここなら逆にお金がもらえるかもしれないのか」
あなたは、入力フォームを開いた。
正樹が見つけたのは、このサービスだった
※最大20社から査定。故障品・ジャンク品もOK
査定結果を見て、声が出なかった
翌日から、続々と査定結果が届いた。
最初に入力したのは、ヤンマーのトラクター。父が一番長く使っていた相棒だった。
A社:8万円
B社:12万円
C社:15万円
地元の業者には「処分費用5万円」と言われたトラクターが、15万円で売れるかもしれない。
差額は20万円。
田植え機も査定に出した。こちらも、最高で4万5千円の値がついた。
草刈り機、発電機、コンバインのアタッチメント。一つひとつ査定に出していくと、合計で30万円以上の買取額になった。
処分費用を払うどころか、30万円が手に入る。
あなたは父に電話した。
「お父さん、倉庫の農機具、全部で30万円くらいで売れそうだよ」
父は、しばらく黙っていた。
「……そうか。まだ値打ちがあるんだな、あいつらにも」
「あいつら」。父は農機具のことを、そう呼んだ。
買取の日、父がトラクターに手を置いた
買取業者が実家に来た日、あなたは有給を取って新潟に帰った。
業者の担当者は、40代くらいの男性だった。農機具に詳しく、一台一台、状態を丁寧に確認してくれた。
「お父さん、よく手入れされていますね。この年式でこの状態は、なかなかないですよ」
父は、少し照れくさそうに「まあな」と言った。
トラクターが積み込まれる前、父がそっと運転席に手を置いた。
何も言わなかった。ただ、しばらくそこに手を置いていた。
50年間、一緒に田んぼを耕してきた相棒。春の田起こし、梅雨の代掻き、秋の収穫。毎年、同じサイクルを、この相棒と一緒に繰り返してきた。
あなたは、父の背中を見ていた。
小さくなったな、と思った。でも、まっすぐな背中だった。
「次に使ってくれる人がいるなら、それが一番だ」
父がそう言って、手を離した。
トラクターは、トラックに積まれて、新しい持ち主のところへ旅立っていった。
もしあなたが、同じ場所にいるなら
親が農業を引退した。あるいは、引退を考えている。
倉庫に農機具が残っている。トラクター、田植え機、コンバイン、草刈り機。処分するにも方法がわからない。地元の業者に聞いたら「処分費用がかかる」と言われた。
でも、捨てるのはもったいない。親が大切にしてきた道具だから。
もしそんな状況にあるなら、捨てる前に、一度だけ「買取」の可能性を確かめてみてほしい。
処分費用を払うつもりだった農機具に、思いもよらない値段がつくことがある。業者によって買取価格は大きく異なるから、一括で比較できるサービスを使えば、一番高く買い取ってくれるところが見つかる。
故障していても、古くても、査定だけなら無料。値段を見て、納得できなければ売らなければいい。
親が50年間、大切にしてきた道具を、次に使ってくれる人に届ける。それは、ただの「処分」ではなく、「引き継ぎ」なのかもしれない。
捨てる前に、一度だけ値段を確かめてみてほしい
※査定だけで売らなくてもOK。全国対応
倉庫の引き戸を開けたとき、そこにあったのは、父の人生そのものだった。
50年間、家族を養ってきた道具たち。
それが、次の誰かの手で、またどこかの田んぼを耕す。
父の農業は終わった。でも、あの道具たちの仕事は、まだ続いていく。
52歳。親の人生を、きちんと送り出す。それも、子どもの大切な役目だ。

