幸子(さちこ)、54歳。新潟県在住の事務職。48歳ごろから体型が変わり始め、何をしても戻らなかった。一人娘の結婚式まであと5ヶ月。先日の衣装合わせで、フォーマルワンピースのファスナーがあと3センチ閉まらなかった。娘には、言わなかった。
試着室のカーテンを閉めると、外の音が遠くなった。
担当の方にファスナーを上げてもらいながら、鏡の前に立った。深いネイビーのワンピースが、体のラインに沿っている。これにしようと、最初から決めていた色だった。
「少し後ろのファスナーを上げますね」
担当の方の手が、途中で止まった。
「もう少しだけ、息を吐いてみてください」
吐いた。目一杯吐いた。それでも、あと3センチ。
鏡の中の自分と、目が合った。
娘には、言えなかった
カーテンを開けると、娘が振り返った。目が輝いている。小学校の発表会の朝も、成人式の朝も、こういう顔をしていた。何かを楽しみにしているときの、あの顔。
「どうだった、お母さん」
「うーん、もうちょっと別のを見てみようか」と笑って言った。娘は「そうだね」と頷いて、次の棚に向かった。
その背中を見ながら、幸子は小さく息を吐いた。あと3センチのことは、言わなかった。この子の結婚式という晴れの日に、母親の体型の話など持ち込みたくなかった。もうずっと、そうやって生きてきた。心配させないように、笑って、やり過ごす。それが、母親というものだと思っていた。
「また今度」が、もう使えない
体型が変わり始めたのは、48歳のころだった。炭水化物を減らした。夕食を早い時間にした。週末に近所を歩いた。それでも、ウエストまわりだけが年々緩んでいく。更年期のせいだと婦人科の先生に言われた。女性ホルモンが減ると、脂肪の付き方が変わるのだという。
ジムに入会したこともある。3回通って、やめた。仕事帰りに動く気力が、もう残っていなかった。ヨガの動画も買った。2週間で積んだ。「また今度」と言い聞かせるたびに、また今度が来ることなく季節が変わった。6年間、そうやって過ごしてきた。
でも今度は、また今度が使えない。結婚式まで、あと5ヶ月。
布団の中で、スマホを開いた
衣装合わせから帰って、夕食を作って、片付けて、風呂に入った。布団に入っても、あの鏡の中の自分が頭から離れなかった。娘の隣に立つ。写真が残る。ビデオが残る。
スマホを開いた。「更年期 太り オンライン」と打ち込んだ。
いくつかのページを読み進めるうちに、「遺伝子検査でその人の痩せ方タイプを診断するオンラインのジム」という言葉に目が止まった。人によって、太りやすい原因が違う。脂質が原因の人、糖質が原因の人。自分の体の傾向を知った上で取り組めば、闇雲に食事を減らすより、ずっと自分に合ったやり方が見つかる。運動も食事も、専属の人が毎日そばで見ていてくれる。自宅の画面の向こうで、つながれる。
「一人じゃないなら、続くかもしれない」
ページの一番下に、無料カウンセリングの予約フォームがあった。幸子はしばらくそれを見てから、スマホを持ち直した。
幸子が見つけたのは、ここだった
※遺伝子検査でその人の痩せ方タイプを診断。オンライン完結
誰にも言わずに、5ヶ月
カウンセリングを予約した。仕事が終わった夜、画面の向こうのトレーナーに話した。体型が変わったこと。ジムに続かなかったこと。娘の結婚式があること。全部話した。
「一人で全部やろうとしなくていいですよ」
その言葉が、静かに胸に落ちた。
それからの5ヶ月、誰にも言わなかった。娘にも、夫にも、職場の誰にも。毎朝5時半に起きて、まだ暗いリビングで体を動かした。夕食の前に、食事の写真をトレーナーに送った。遺伝子検査の結果が届いてからは、外食でも何を選べばいいかが少しずつわかるようになった。返信が届くたびに、見ていてくれる人がいると思えた。続かなかった自分が、続いていた。
鏡を見るたびに、何かが少しずつ変わっていく気がした。体が軽くなった気がした。朝、目覚ましが鳴る前に目が覚めるようになった。
※個人の感想であり、効能効果を保証するものではありません。
結婚式の朝、娘が泣いた
結婚式の朝、着替えを終えてファスナーを上げた。すっと、上まで閉まった。
「あら、きれいに入りましたね」
幸子は黙って、鏡の中の自分を見た。5ヶ月前と、同じワンピース。同じ鏡。でも、何かが違った。
しばらくして、娘が部屋に入ってきた。着替えを終えた母を見て、一瞬だけ足を止めた。
「お母さん……痩せた?」
「少しだけね」
娘が黙った。何かを考えるように、また幸子を見た。
「衣装合わせのとき、ファスナー閉まらなかった?」
「……うん。あと3センチだったから」
「言ってくれたらよかったのに」
「心配させたくなかったのよ」
娘の目が、赤くなった。幸子の手を、両手で包むように握った。言葉は、もう要らなかった。
窓の外に、春の光が差し込んでいた。
もしあなたにも、誰かのために綺麗でいたい理由があるなら
「また今度」と言い続けてきた。でも今だけは、また今度にできない。そんな気持ちが、あなたの中にもあるなら。
一人で抱えなくていい
※無料カウンセリング&体験レッスンあり。30日間全額返金保証
結婚式の写真が届いた。娘の隣で、ネイビーのワンピース姿の自分が笑っていた。しばらく眺めてから、棚にそっと飾った。
その夜から、家が静かになった。夕飯は一人分だけ作る。洗い物も少ない。娘の部屋のドアが、ずっと閉まったままになっている。
翌朝も、5時半に目覚ましが鳴った。幸子は布団から出て、リビングのカーテンをそっと開けた。冬の終わりの空が、窓いっぱいに広がっていた。
誰かが起きてくるわけではない。でも、幸子は体を動かし始めた。この朝が、自分のものになっていた。

