純子(じゅんこ)、53歳。山梨県在住の会社員。最近、夜眠れなくなった。布団に入っても、仕事のことや母の介護のことが頭を回る。朝は体が重くて起き上がれない。日中はぼんやりして集中できない。「精神科に行ったほうがいいのかも」と思うけれど、近所の心療内科は予約が2ヶ月先。仕事を休んで通院する余裕もない。何より、「精神科に通っている」と周りに知られたくない。
午前2時。天井を見ている。
目を閉じているのに、脳が止まらない。
明日の会議の資料、まだ終わっていない。来週の母のデイサービスの送迎、シフトと重なっている。先月のクレジットカードの引き落とし、確認したっけ。娘から連絡がない。大丈夫かな。
一つ考えると、次の心配が湧いてくる。それを押し込めると、また別の不安が頭をもたげる。エンドレスの回転。
時計を見る。2時47分。
目覚ましは6時に鳴る。あと3時間。でも、眠れない。
こんな夜が、もう3ヶ月続いている。
朝が来るのが、つらい
目覚ましが鳴る。体が重い。
布団から出るまでに、15分かかる。以前は、目覚ましが鳴ったらすぐに起きて、朝食を作って、洗濯を回して、身支度を整えて家を出ていた。
今は、起き上がるだけで精一杯。朝食は食べられない。コーヒーだけ飲んで、ぎりぎりの時間に家を出る。
会社に着いても、頭がぼんやりしている。パソコンの画面を見ているけれど、文字が頭に入ってこない。同僚に話しかけられても、反応が一拍遅れる。
「純子さん、大丈夫? 顔色悪いよ」
「大丈夫、ちょっと寝不足で」
「ちょっと」ではなかった。3ヶ月間、まともに眠れていない。
53歳、全部が重なった
眠れなくなったきっかけは、一つではなかった。
仕事。部署異動で、慣れない業務が増えた。新しい上司との折り合いが悪い。相談できる同僚もいない。
母の介護。80歳の母が要介護1になった。週に2回、デイサービスに通っているけれど、それ以外の日は自分が面倒を見ている。買い物、通院の付き添い、食事の用意。
更年期。ホットフラッシュが突然やってきて、汗が止まらなくなる。夜中に急に体が熱くなって目が覚める。
仕事、介護、更年期。全部が同時に襲ってきた。
一つならなんとかなる。でも、全部重なると、どこから手をつけていいかわからなくなる。
そして、眠れなくなった。
「精神科に行ったほうがいい」とわかっているけれど
自分でも、おかしいと思っている。
3ヶ月間眠れない。朝起きられない。集中できない。ときどき、理由もなく涙が出る。
「心療内科に行ったほうがいいのかも」
頭ではわかっている。でも、動けない。理由は三つあった。
一つ目。予約が取れない。近所の心療内科に電話したら、「初診の予約は2ヶ月先になります」と言われた。2ヶ月も待てない。でも、2ヶ月後まで我慢するしかないのか。
二つ目。通院の時間がない。心療内科は平日の日中しか開いていない。仕事を休んで通うしかない。でも、部署異動したばかりで休めない。
三つ目。知られたくない。「精神科に通っている」ということを、会社にも、近所にも、友人にも知られたくない。田舎では、心療内科に通っているだけで噂になる。
この三つの壁が、あなたを止めていた。
「自宅から、誰にも会わずに受診できる」と知った夜
ある夜、また眠れない布団の中で、スマホを触っていた。
「眠れない 3ヶ月 病院」と検索した。
「数週間以上眠れない状態が続く場合は、医師への相談をおすすめします」
わかっている。でも、予約が取れない。通えない。知られたくない。
さらに検索していくと、「オンライン診療」という言葉が目に入った。
精神科・心療内科のオンライン診療。自宅から、ビデオ通話で、現役の精神科医に診てもらえる。保険診療。
当日受診可能。土日祝も対応。夜24時まで。予約制だから待ち時間なし。薬は自宅に配送。
「自宅から受診できるの……?」
三つの壁が、一度に崩れた。
予約が2ヶ月先ではない。当日でも受診できる。通院の必要がない。自宅のリビングから、スマホ一つで。そして、誰にも会わない。待合室で知り合いに会う心配もない。
「これなら、今夜でも予約できる」
純子が見つけたのは、このサービスだった
※保険診療。当日受診可能。自宅から、誰にも会わずに
画面の向こうの先生が、静かに聞いてくれた
翌日の夜、予約を取った。仕事が終わった後の、20時。
リビングのソファに座って、スマホの画面を見た。ビデオ通話がつながると、30代くらいの女性の医師が映った。
「純子さん、今日はよろしくお願いします。まず、今一番つらいことを教えてください」
穏やかな声だった。
あなたは、話し始めた。眠れないこと。朝が起きられないこと。仕事のこと。母の介護のこと。涙が止まらなくなること。
話しているうちに、また涙が出た。
先生は、遮らなかった。うなずきながら、静かに聞いてくれた。
「純子さん、3ヶ月間、本当に大変でしたね。一人で全部抱えていたんですね」
その一言で、胸の中の何かが、少しだけ緩んだ。
先生は、現在の症状を丁寧に確認してくれた。睡眠の状態、食欲、気分の変動、体の症状。そして、今の状態に合った治療の方針を、わかりやすく説明してくれた。
「まずは眠れるようにすることが大切です。お薬を処方しますので、無理せず使ってみてください」
診察は15分ほどで終わった。薬は翌日、自宅に届くという。
スマホの画面が消えた後、あなたはソファに座ったまま、しばらく動けなかった。
泣いていた。でも、3ヶ月間の涙とは、少し違う涙だった。
薬を飲んだ夜、久しぶりに朝まで眠れた
翌日、薬が届いた。その夜、処方された薬を飲んで、布団に入った。
天井を見た。いつもなら、ここから回転が始まる。仕事のこと、母のこと、将来のこと。
でも今夜は、回転が穏やかだった。頭の中の声が、少しずつ遠くなっていく。
気がついたら、朝だった。
時計を見た。6時12分。目覚ましが鳴る前に、自然に目が覚めた。
体が、軽い。
3ヶ月ぶりに、朝まで眠れた。
窓を開けた。朝の空気が、冷たくて気持ちよかった。
「ああ、眠れるって、こんなに違うんだ」
もしあなたが、天井を見つめている夜が続いているなら
眠れない。朝が起きられない。気分が沈む。涙が止まらない。
「病院に行ったほうがいい」とわかっている。でも、予約が取れない。通院する時間がない。知られたくない。
もしそんなあなたがいるなら、知っておいてほしい。
今は、自宅から、スマホ一つで、精神科医に診てもらえる時代になった。保険診療で、当日受診もできる。夜24時まで対応。土日祝もOK。待合室で誰かに会う心配もない。薬は自宅に届く。
「まだ病院に行くほどでは」と思うかもしれない。でも、眠れない夜が数週間以上続いているなら、それはもう「行くほど」の状態かもしれない。
一人で全部抱え込まなくていい。画面の向こうに、あなたの話を聞いてくれる医師がいる。
眠れない夜が続いているなら、一人で抱え込まなくていい
※再診2,900円前後。土日祝・24時まで対応
午前2時、天井を見つめていたあの夜。脳が止まらなくて、朝が怖かったあの日々。
今、同じ天井を見ている。でも、目を閉じれば、眠れる。朝が来ることが、怖くなくなった。
53歳。助けを求めることは、弱さではなかった。自分を守るための、一番勇気のいる一歩だった。

