京子(きょうこ)、50歳。香川県高松市在住。市役所の窓口で25年間働いてきた。今日が誕生日。50歳になった。何か新しいことを始めたいと、朝の鏡の前で初めて思った。体を動かすことは好きで、40代からストレッチを続けてきた。「誰かに教えたい」と漠然と思っていたけれど、経営の知識はないし、大きなお金を使う勇気もない。
今朝、50歳になった。
目覚ましが鳴って、いつもと同じ時間に起きて、洗面所に行った。鏡に映った自分の顔を見た。昨日と何も変わっていない。しわが一本増えたわけでもない。でも今日から50歳だと思うと、鏡の前で足が止まった。
夫がリビングから「おめでとう」と言ってくれた。娘からはLINEにスタンプが届いていた。ケーキは帰りに買って帰る約束をしている。嬉しいはずなのに、嬉しさとは違う何かが、朝の光と一緒に胸の中に差し込んできた。
50歳。人生の半分が過ぎた。
残りの半分を、どう生きるのか。
25年間、同じ窓口に座ってきた
京子は25歳で市役所に入った。窓口対応の部署に配属されて、それからずっと、市民と向き合ってきた。転入届、戸籍、住民票。毎日同じような手続きが続く。でも、窓口に来る人は毎日違った。引っ越してきたばかりで不安そうな若い夫婦、赤ん坊を抱えて出生届を出しに来たお父さん、パートナーを亡くして戸籍の変更に来た高齢の女性。
京子は一人一人に丁寧に対応してきた。マニュアル通りではなく、少しだけ多く説明する。少しだけ声を柔らかくする。その「少しだけ」が、25年間の京子の仕事だった。
やりがいがないわけではなかった。でも50歳の朝、鏡を見たとき、初めて思った。このままあと10年、同じ窓口に座って、定年を迎えて、それで終わるのだろうか、と。
40代から続けてきた、朝のストレッチ
京子には、一つだけ続けていることがあった。毎朝のストレッチだ。
40歳の頃から肩こりがひどくなった。デスクワークで背中が丸まり、猫背が癖になっていた。整体に通っていたけれど、月に1回行っても、翌日にはまた元に戻る。自分でなんとかしたいと思って、本を読みながらストレッチを始めた。
最初は5分だった。それが10分になり、15分になり、気がついたら毎朝20分、リビングの窓際でストレッチをしてから出勤するのが日課になっていた。肩こりは軽くなった。姿勢も変わった。40代後半で「背筋がきれいですね」と言われたとき、嬉しかった。
友人に「何かやってるの?」と聞かれて、ストレッチの動きを教えたことがある。友人は「すごく気持ちいい」と言ってくれた。そのとき、初めて思った。「これ、誰かに教えたら喜ばれるかもしれない」
「教えたい」。でも、自分にできるのか
誰かに教えたい、という気持ちは、それ以来ずっと胸の中にあった。でも一度も口にしなかった。自分は市役所の窓口職員であって、インストラクターでも経営者でもない。教室を開くなんて、何から始めればいいのかわからない。場所は? 資格は? お金は? 集客は?
考えるほどに、壁が増えていった。家賃を払ってテナントを借りるような余裕はない。経営の経験もない。「やっぱり無理だ」と思って、また窓口の椅子に座る毎日が続いた。
50歳の誕生日の夜、ケーキを食べ終わった後、京子は一人で台所を片付けながら考えていた。あと10年、同じ窓口に座って定年を迎える自分と、何か新しいことを始めてみる自分。どちらの60歳の方が、あの日の鏡に映る自分に恥ずかしくないだろうか。
スマホを開いた。「ストレッチ 教室 開業 未経験」と打ち込んだ。
家賃なし、1日30分から始められる教室
いくつかのサイトを読むうちに、ストレッチ教室のフランチャイズがあることを知った。棒を1本使って、姿勢を改善しながら全身をケアするプログラム。シニア女性がメインの生徒で、運動が苦手な人でもできる。
驚いたのは、開業のハードルの低さだった。公民館や地域の公共施設を借りて開講するから、テナントの家賃がかからない。集客はチラシを施設に置くだけでいい。1日30分のレッスンから始められる。未経験でも研修がある。マニュアルとサポートが付いているから、「経営する」というより「仕組みに乗る」感覚で始められる。
「公民館なら、高松にもたくさんある」
京子の頭の中に、市役所で毎日見ている公民館の予約表が浮かんだ。平日の午前中は空いていることが多い。場所はある。あとは、自分が動くかどうかだけだった。
京子が見つけたのは、ここだった
※Zoom説明会30分。未経験者OK。家賃リスクなし
最初の生徒は、近所のおばあちゃんだった
説明会に参加して、研修を受けて、京子は地元の公民館でストレッチ教室を始めた。まだ市役所は辞めていない。週末の午前中だけ、小さな教室を開くことにした。
チラシを公民館に置いた翌週、最初の申し込みがあった。近所に住む72歳の女性だった。膝が痛くて散歩もままならない、でも運動はしたいと思っていた、と話してくれた。
初めてのレッスンの日、京子は緊張していた。でも、棒を渡して、一つ一つ動きを教えていくうちに、自分の体が覚えている動きがそのまま言葉になった。10年間、毎朝続けてきたストレッチ。その一つ一つが、目の前のおばあちゃんの体に伝わっていった。
30分のレッスンが終わったとき、そのおばあちゃんが言った。
「背中が軽い。こんなに軽くなったの、久しぶり」
その言葉を聞いたとき、京子の中で何かが動いた。25年間、窓口で書類を受け渡してきた。丁寧に対応はしてきた。でも、「背中が軽くなった」と目の前で喜んでもらえる仕事は、初めてだった。
もしあなたも、50歳の朝に立ち止まったなら
このまま定年まで同じ毎日を過ごすのか。何か新しいことを始めたいけれど、経営の経験もないし、大きなお金を使う勇気もない。体を動かすことは好きだけど、「教える」なんて自分にできるのか。
もしそんなあなたがいるなら、知っておいてほしい。家賃のリスクなし、1日30分から、未経験でもサポート付きで始められるストレッチ教室がある。テナントを借りる必要はない。公民館で、地域のシニア女性の健康を支える仕事ができる。
大きな一歩じゃなくていい。まずは話を聞いてみるだけでいい。
50歳の今日が、始まりの日になるかもしれない
※1日30分からOK。地域のシニア女性の健康を支える仕事
50歳の誕生日の朝、鏡の前で立ち止まった。「このまま、でいいのかな」と思った。
あれから半年。京子はまだ市役所で働いている。平日は窓口に座っている。でも週末の朝だけは、公民館のホールに立って、棒を持って、おばあちゃんたちと一緒にストレッチをしている。生徒は少しずつ増えて、今は5人になった。
レッスンが終わると、みんなで「背中が軽くなったね」と笑い合う。その時間が、京子の1週間で一番好きな時間になっている。
50歳。何かを始めるのに、遅すぎることはなかった。

