暮らし・終活– category –
終活・介護・身元保証・生前整理・エンディングノート
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暮らし・終活
57歳、12年乗ったミニバンの後部座席に、もう誰も座らない。シートの隙間から、息子の消しゴムが出てきた。
57歳、12年乗った3列シートのミニバン。子供たちが独立して、後部座席に誰も座らなくなった。車検の見積もりは32万円。妻が言った「もう、二人で乗る車にしない?」。最後の掃除で、シートの隙間から息子の消しゴムが出てきた。 -
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53歳、14歳の柴犬がごはんを残すようになった。夫が言った「14年前のコタロウと今は違うだろ」。
53歳、14歳の柴犬コタロウがごはんを残すようになった。14年間、一度も残したことがなかった。夫が言った。「14年前のコタロウと今のコタロウは、違うだろ」。その一言で幸恵は気づいた。コタロウの身体は変わっていたのに、同じフードを食べさせ続けていた。 -
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54歳、夫が定年退職した夏。孫の「ばあば」に、振り向けない台所を変えたかった。
54歳、築28年の古い台所。初孫の美咲が「ばあば」と呼んでも、壁に向かう古いキッチンでは振り向けなかった。35年間、家のことに無関心だったはずの夫が、ある土曜日、ぽつりと言った。「美咲が、ばあばって呼んでも、お前振り向かないから」。 -
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53歳、両親が遺した山沿いの家。3年間、誰も住まないまま、ただ雨戸を閉めていた。
53歳、3年ぶりに実家の鍵を開けた。父が60代で建てた、静岡の山沿いの家。母が縁側で編み物をしていた家。両親を見送ってから、ただ雨戸を閉めて固定資産税を払い続けていた。でも、天井にはシミが広がっていた。放っておけば、この家は朽ちていく。売ることも、放置することもできず、ある夜、真一はスマホで検索した。 -
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54歳、車庫の奥にバイクがある。20年間カバーをかけたまま。キックを踏んだら、エンジンはかからなかった。
54歳の雅人は、20歳のときに買ったヤマハのSR400を20年間車庫に眠らせていた。妻の真紀とは、パンクした原付を助けたことがきっかけで出会った。娘の春菜が3歳のとき、タンクの上にまたがらせて写真を撮った。その写真は今も財布の中にある。今年、カバーを外してキックを踏んだ。エンジンはかからなかった。 -
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59歳、ファインダーを覗いても、端が暗い。39年間撮り続けたカメラを、手放すと決めた。
59歳の義男は、19歳で父からもらったカメラで写真を始めて40年になる。犀川の靄、兼六園の雪吊り、能登の海。家族の写真もたくさん撮った。去年、緑内障でファインダーの端が暗くなった。もう自分の目が信じられない。カメラバッグは半年間、閉じたまま。 -
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53歳、押入れの奥にトランペットがある。35年間、一度も吹いていない。でも、捨てられない。
53歳の裕介は、高校の吹奏楽部でトランペットを吹いていた。楽器は母がパート代を貯めて買ってくれたもの。マイルス・デイビスに憧れて、放課後の音楽室で何時間も吹いた。大学で楽器を離れて35年。母が亡くなり、実家の押入れからトランペットが出てきた。 -
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54歳、夫が「もう誰かに乗ってもらったほうがいい」と言った夜。庭のセダンは、3年間動いていない。
54歳の文子の夫・正志は、3年前に脳梗塞で倒れた。定年前のご褒美に買った紺色のセダンは庭に止まったまま、車検が切れて動かない。正志はときどき庭に出て、ボンネットを撫でている。ある日の夕食で、正志が言った。「もう誰かに乗ってもらったほうがいい」。 -
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55歳、息子が乗らなくなったミニバンが車庫にいる。売りたい。でも、電話が怖い。
55歳の克也は、長野県軽井沢で妻と二人暮らし。息子が帰省しなくなり、5年前に買ったミニバンに乗る用事がなくなった。売りたいけれど、一括査定に申し込んだら電話が鳴りまくると聞いて、半年間動けずにいた。 -
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52歳、台所の明かりをつけるのが怖い。でも、もう「おーい」と呼べる人はいない。
52歳の香織は、滋賀県大津市で一人暮らしをしている。結婚していた19年間、虫が出るたびに夫を呼んでいた。離婚して最初の夏、台所に黒い影が走った日から、明かりをつけるのが怖くなった。
