誠(まこと)、58歳。東京都在住の会社員。半年前に母親(享年85歳)が亡くなった。実家は千葉県にある築40年の一軒家で、母が一人で住んでいた。母の死因は自宅での病死だったが、発見まで数日かかってしまった。葬儀の後、実家を売ろうとしたが、不動産会社から「事故物件扱いになる可能性があります」と言われた。相続人として告知義務の期間は何年なのか、次の買主にどこまで伝えればいいのか、何もわからないまま、空き家となった実家の管理費だけが毎月出ていく。
母が亡くなったと連絡を受けたのは、半年前の金曜日の夜だった。
近所の人が、郵便受けが何日も空いていないことを心配して、大家さん経由で警察に連絡してくれた。警察が踏み込んだとき、母はすでに亡くなっていた。
発見までに、4日かかっていた。
千葉まで駆けつけた私は、母が倒れていた場所に立って、しばらく動けなかった。
85歳だった母。父が15年前に亡くなってから、一人でこの家に住み続けた母。私は東京で家庭を持ち、月に一度電話をかけるのが精いっぱいだった。「一人で大丈夫」と言い張る母を、私は信じたかった。いや、信じたふりをしていた。
最後の電話は、1ヶ月前だった。
「元気だから、心配しないで」
それが母の最後の声だった。
葬儀の後、「事故物件」という言葉が重くのしかかった
葬儀が終わって、実家の片付けを始めた。
築40年の一軒家。母が嫁いできたときから住んでいた家。父と私と妹が暮らした家。思い出が詰まった家を、これからどうするか。妹と話し合って、売却することに決めた。
近所の不動産会社に相談に行った。
担当者は物件の写真を見て、少し言いにくそうに切り出した。
「誠さん、この物件……事故物件扱いになる可能性があります」
私は耳を疑った。
「事故物件?母は病気で亡くなったんですよ。事件とかじゃなくて」
「それはわかっています。ただ、発見まで時間がかかってしまった場合、建物内での死亡が『心理的瑕疵』として扱われるケースがあります。特殊清掃が必要だった場合は特に」
言葉が出なかった。
母の死を、「事故」という言葉で呼ばれることの、重さ。
「で、どうすればいいんですか」
担当者は、いくつかの用語を口にした。告知義務、告知義務期間、心理的瑕疵、特殊清掃、買取業者。全部、それまで一度も聞いたことのない言葉だった。
「少し、調べてみてください。私たちも対応はできますが、専門の業者さんのほうがスムーズかもしれません」
帰りの電車で、私はスマホを開いた。
「事故物件 告知義務 期間」
「事故物件の告知義務期間」について、私が調べたこと
検索してわかったことは、衝撃的だった。
事故物件の告知義務というのは、不動産を売ったり貸したりするときに、「過去にその物件でこういう事故や事件があった」と買主や借主に伝える義務のこと。これを伝えずに売買や賃貸をすると、後から訴えられる可能性がある。
では、告知義務の期間は何年なのか。
国土交通省のガイドラインでは、おおむね以下のように整理されている。
賃貸の場合:事案発生からおおむね3年間
売買の場合:期間の定めなし(原則として告知義務が続く)
ただし、これはあくまで目安です。事件性がある場合、社会的影響が大きい場合、近隣住民が強く記憶している場合などは、期間を超えても告知義務が発生することがあります。自然死や病死でも、発見まで時間がかかって特殊清掃が必要だった場合は、告知対象となるケースが多いです。
「売買の場合は、期間の定めなし」
その一文を見て、私は息を飲んだ。
つまり、母が亡くなったこの家を売るとき、私は何十年経っても、買主に「ここで人が亡くなった」と伝え続けなければならないのか。
そして、その告知があれば、当然、値段も大きく下がる。
相続した事故物件、売れないまま管理費だけが出ていく
それから、私は3社の不動産会社に相談した。
どの会社も、似たような反応だった。
「売れなくはないですが、通常の相場の半額程度になるかもしれません」
「買い手がつくまで、1年以上かかる可能性もあります」
「特殊清掃、リフォーム、解体など、費用が先に発生します」
売れる、とは言ってくれた。でも、時間もお金もかかる。
その間も、空き家となった実家には、毎月の固定資産税、火災保険料、庭の草むしりの外注費、水道光熱費の基本料金が発生し続けた。
月に3〜4万円。
1年で40万円以上が、誰も住んでいない家のために出ていく計算だった。
妹からも、電話で不安げに聞かれた。
「お兄ちゃん、あの家、どうするの」
私には、答えられなかった。
「事故物件の専門業者」という選択肢
悩んでいるとき、ある夜、再度検索をかけてみた。
「事故物件 買取 専門」
調べていくと、事故物件の買取を専門にしている会社があることを知った。一般的な不動産会社とは違い、事故物件の取り扱いに特化している。
専門業者のメリットは、いくつもあった。
まず、査定が速い。通常の不動産会社が「うちでは扱いが難しい」と言う物件でも、専門業者は過去の取引データを持っているから、相場を正確に算出できる。
次に、買取価格が妥当になる。事故物件専門のネットワークを持っているから、「事故物件に抵抗感が少ない買主」に直接売却できる。だから、通常の業者より高く買い取ってもらえる可能性がある。
そして何より、スピードが違う。最短即日で現金化できるケースもあるらしい。
さらに、特殊清掃や解体、リノベーションまでワンストップで対応してくれる会社もあった。売主にとっては、追加の手間がかからない。
私は、もう一度検索窓に打ち込んだ。
「事故物件 買取 査定 無料」
その中で、一つの会社のサイトに目が止まった。「正しい買取」を掲げている会社だった。
正しい相場調査、正しい施工、正しい販売網。過去1,000件以上の事故物件の取引データを持っていて、事故物件に特化したポータルサイトも運営している。
「これなら、相談してみてもいいかもしれない」
査定を依頼した後、事態は大きく動いた
査定は無料だった。
オンラインのフォームで物件情報を入力すると、翌日には担当者から連絡が来た。
電話口の担当者は、落ち着いた声だった。
「誠さん、お辛い状況でしょう。私どもは、これまで多くのご遺族の方とお会いしてきました。ご安心ください」
その一言で、肩の力が少し抜けた。
担当者は、告知義務期間の話、買取後の売主責任がないこと、仲介手数料がかからないこと、お祓いや供養まで手配できることを、丁寧に説明してくれた。
「買取価格は、一般の不動産会社の査定より高めに出せる可能性があります」
数日後、現地調査を経て、正式な査定額が出た。
私が3社で聞いた査定額の、1.5倍だった。
しかも、買取後の売主責任なし。告知義務も業者側が引き継ぐ。特殊清掃も含めて全てワンストップ。最短で、2週間後には引き渡しができるという。
長く抱えていた重い荷物が、少しずつ降りていく感覚があった。
お祓いの日、母に向かって手を合わせた
引き渡しの前、業者さんの手配で、お祓いを行った。
お坊さんが読経を上げる中、私と妹は、母が40年住んだ家に最後の挨拶をした。
「お母さん、ここを離れることになるよ」
「ごめんね、もっと早く気づいてあげられなくて」
「新しい人が、ちゃんと大事にしてくれる家になるように、送るね」
妹が、静かに泣いていた。
事故物件という重い言葉を、一人で抱え込んでいた数ヶ月。告知義務期間を調べて、何十年も背負い続けなければいけないのかと絶望した夜。月々の管理費に追い詰められた日々。
全部、終わった。
業者さんの手によって、家はきれいに生まれ変わる。次に住む人に、正しく説明された上で、新しい家族を迎える。
それは、母にとっても、良い送り出し方だったのかもしれないと、私は思った。
もしあなたが、同じ場所にいるなら
親が亡くなった。
発見まで時間がかかった。特殊清掃が必要だった。不動産会社から「事故物件扱いになるかも」と言われた。
告知義務の期間は何年なのか調べてみたけれど、売買の場合は期間の定めがないと知って、途方に暮れた。
普通の不動産会社では扱いが難しいと言われ、相場の半額を提示され、それでも売れるかどうかわからないと言われ、空き家の管理費だけが毎月出ていく。
一人で抱え込むことが、辛くなっていませんか。
事故物件専門の買取業者という選択肢があることを、知らない人がまだ多い。
告知義務の期間を自分一人で背負い続ける必要はない。買取してもらえば、その責任は業者に引き継がれる。
時間をかけて売るより、きちんと供養して、早く次の人に引き継ぐほうが、親にとっても良い送り出しになる。
査定だけなら無料でできる。依頼するかどうかは、金額を見てから決めればいい。
事故物件という言葉の重さ。告知義務期間という不安。
それを一人で抱え込んで、夜眠れなくなる必要はない。
あなたが今、ここまで一人で背負ってきたことを、次の誰かに正しく引き継ぐ方法がある。
親が残してくれた家を、きちんと送り出すために。

