暮らし:家族– tag –
-
お金・資産
54歳、夫が「異常なし」と言う夜。風呂の水音を聞きながら、私は封筒を開ける。
54歳、夫の勝が健康診断の結果を持って帰ってきた。「今年も異常なし」。敬子は「そう、よかったね」と答えた。でも毎年、勝が風呂に入っている間に封筒を開けて、全ての数値を確認している。義父は63歳で胃がん。義母は70歳で大腸がん。義兄は58歳で肺がん。勝は56歳。28年前のがん保険が、今の治療に足りるのかわからなかった。 -
お金・資産
56歳、息子が家を買う。30年前、カーテンのない窓から月を見た夜を思い出した。
56歳、息子から「家を買おうと思ってる」と電話があった。嬉しかった。でも、30年前のことを思い出した。頭金がギリギリで、仲介手数料で百万円が飛んで、カーテンが買えなかった。引っ越した夜、窓から月を見た。息子夫婦にあの思いはさせたくなかった。 -
暮らし・終活
57歳、12年乗ったミニバンの後部座席に、もう誰も座らない。シートの隙間から、息子の消しゴムが出てきた。
57歳、12年乗った3列シートのミニバン。子供たちが独立して、後部座席に誰も座らなくなった。車検の見積もりは32万円。妻が言った「もう、二人で乗る車にしない?」。最後の掃除で、シートの隙間から息子の消しゴムが出てきた。 -
暮らし・終活
53歳、14歳の柴犬がごはんを残すようになった。夫が言った「14年前のコタロウと今は違うだろ」。
53歳、14歳の柴犬コタロウがごはんを残すようになった。14年間、一度も残したことがなかった。夫が言った。「14年前のコタロウと今のコタロウは、違うだろ」。その一言で幸恵は気づいた。コタロウの身体は変わっていたのに、同じフードを食べさせ続けていた。 -
お金・資産
54歳、冬のガス代14,000円を30年間払い続けてきた。夫が「朝のシャワー、やめようか」と言った夜。
54歳、築30年の戸建てで、プロパンガス代を30年間払い続けてきた。夫の残業がなくなった月、夫が言った。「朝のシャワー、やめようか」。孝子はその言葉の奥にある夫の覚悟を見た。夫のシャワーを守るために、孝子が調べたのはガス会社の変更だった。 -
暮らし・終活
54歳、夫が定年退職した夏。孫の「ばあば」に、振り向けない台所を変えたかった。
54歳、築28年の古い台所。初孫の美咲が「ばあば」と呼んでも、壁に向かう古いキッチンでは振り向けなかった。35年間、家のことに無関心だったはずの夫が、ある土曜日、ぽつりと言った。「美咲が、ばあばって呼んでも、お前振り向かないから」。 -
お金・資産
「遺産相続 兄弟 もめる」と検索していた。面倒な手続きも、気が重くなる兄弟とのやり取りも、すべて専門家に丸投げできることを知った。
「遺産相続 兄弟」と検索していた。面倒な手続きも、気が重くなる兄弟とのやり取りも、すべて専門家に丸投げできることを知った。 -
お金・資産
52歳、商工会で紹介された税理士がダメだった。妻が遺したファイルに「ここから先はお願いね」と書いてあった。
52歳、フリーランスのデザイナー。独立してからずっと、経理は妻がやってくれていた。2年前に妻を亡くして、毎月の帳簿も領収書の整理も一人で抱えることになった。商工会で紹介された税理士は、連絡が遅く、ミスがあり、謝罪もなかった。妻は10年間、一度もミスをしなかった。ファイルの途中に、妻の字で「ここから先はお願いね」と書いてあった。 -
お金・資産
56歳、「遺産相続 兄弟 もめる」と検索していた。父の遺産で兄弟が口をきかなくなった。押入れの奥に、あの夏の写真があった。
56歳、3ヶ月前に父を亡くした。三兄弟で遺産を分けなければいけない。兄は「長男だから実家は俺が」。弟は「三等分が筋だ」。真ん中の信之は、どちらにもつけなかった。実家の片づけで押入れを開けたとき、一枚の写真が出てきた。裏に父の字で「男四人の夏」と書いてあった。 -
暮らし・終活
52歳、金曜の夕方に届いた訃報。クローゼットの喪服は、15年前のまま止まっていた。
52歳、金曜の夕方に伯母の訃報が届いた。通夜は明日。クローゼットの喪服を出してみたら、ファスナーが上がらなかった。15年前に買ったままだった。伯母は45年前、7歳の美穂に赤い着物をこっそり仕立ててくれた人だった。その伯母の通夜に、ちゃんとした姿で行きたかった。
12
